建物の構造は伝統的な軸組工法。世代を超えて受け継がれる工法をセレクトした。やさしい杢目をもつ杉で組まれた骨太な「合掌梁」の軸組。伝統的な工法と現代のインテリア要素が対比的に響き合い、モダンでありながらどこか懐かしさを感じる空間となった。

ファサードはできるだけ簡素にし、シンプルな切妻屋根とした。屋根の中には外断熱の通気層の気流を利用した自然換気を施してある。フォルム全体はラップサイディングで包み込み、オーナーの色を映り込ませた。

内部空間は、開口部の在り方や空間ボリュームの取り方が重要と考えた。１階は主に作業スペースと位置づけ、２階はデスクワークがメインの構成とした。２階は杢目の表情が心地よい空間となり、自然と人が集まり団欒がうまれるようになった。

竣工後、この建物を訪れ杉のやさしい表情と重厚な合掌梁を眺めながら、ふと想った。施主が表しの構造材を大切に手入れしながら建物と共に成長していき、この建物を使う人びとの心にも深く残る建物になってほしい。使い手が愛着を持って暮らしたとき本当の意味で良い建物といえるのではないか。そんな余白をもった時間を設計することが豊かな未来につながると信じている。