クライアントが私のところに初めて訪問されたのは、今からさかのぼること１０年。とても若いご夫婦で、素敵な夢を胸に訪ねてこられた。その当時の印象は今でも変わらない。

建築構想は様々な条件に左右されながら確立されていくもの。普通でありながら普通ではない構想。

今回は９０㎡の敷地に、様々な条件が加筆された３世帯住宅を計画した。生活リズムが異なるそれぞれの世帯の生活ゾーンを分類し、３層に積み上げた。分類したとはいえ身内なので、実際にはメインキッチンは１階に装備し、洗面・浴室・トイレも並列に配置することにより流動的に使えるよう計画した。またプライバシーの観点から上の２層にもコンパクトな水廻りを装備した。

東側に光庭を設け大型ガラスで囲むことで、プライバシーを確保しながらも上空からの光を柔らかく取り込むことを可能にした。さらにこの光庭は、３層に縦の繋がりをもたらし、どこにいても互いの気配が感じられる空間になった。単なる住空間ではなく、家族のネットワーク空間ができたと考えている。