この集合住宅は１９８０年代に建築された共同住宅。賃貸経営に不可欠な収益の安定化を図るリノヴェーション計画が求められた。

竣工から約３０年を経てどこか心配げな建築の姿にみえたその場所は、スラム化が懸念された。賃貸住宅では、外観の印象は収益性につながり住まう人々に与える力も大きい。再生するにあたり寂れた外観を完全に崩す提案もしたが、費用対効果からみて収益性が得られないという判断に至った。全体像で何が欠けているかを検討し、最終的には断片的な負の力となっているファサードを煉瓦タイルで包むことで、建物の印象を一新した。今回の再生プログラムでは、表層に変化を与えることで、住まう人々に心理的・動的変化をもたらすことに成功した。

コストパフォーマンスについては、１世帯住戸の家賃から算出し工事価格を短期間で回収できる低コストで実現させた。